一路南国へ

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タクシーに荷物を詰め込み、乗り込む。車内は外の湿度が嘘の様に、程よい冷房がサラサラと流れている。 「お客さん、新婚……じゃないよね」 具志堅なまり。沖縄独特の暖かいイントネーションで運転手が話し掛けてきた。 「不倫です」 編集長の言葉に、思わず振り返る運転手。俺は彼に違うと説明したが、その目は完全に誤解していた。 一路、タクシーはホテルへ向い走り出す。 流れる景色は青が目立つ。時折見える海と、都内では見る事が出来ないくらいの空。 沖縄という所は、こんなにも色鮮やかで綺麗なんだと感動した。 反面、誤解されたままの車内は濁っている。 結局、ホテルに着くまで俺は無言。たまに運転手がミラーでチラチラと後部座席を確認していた。 無愛想になってしまった運転手は、俺達をホテルへ降ろすと足早に帰っていった。 「ったく!何言ってんすか!?誤解されてただろ?」 「いいじゃん。ラ・マンとの旅を楽しめば?」 ラ・マンか……。この不倫旅行の結末はどうなるんだろう。
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