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僕は落ちていた。
それまでの記憶はあまり無い。
あるものといえば、どこか狭く暗い場所であてもなく漂っているような、そんな曖昧な記憶くらいのものだ。
意識ははっきりしない。いや、そもそもそんなものが自分に存在するのかすら疑わしい。
わからない。何も。
構わず僕の体は落ちてゆく。
目の前に迫るのは白。
何もないところだ。
けれどそこはなめらかで、なにか光沢のようなものすら感じられて、ひどく美しい場所に思えた。
白の景色が迫ってくる。
視界を白が覆い始め、やがてその白すら自身の黒に塗りつぶされようというとき―――
―――僕は、生まれおちたのだった。
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