2人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
森はいい匂いがした、彼は自らのさ迷える魂と体の行く先を探して歩いた。
そこで天使達が遊戯をしているのを遠くから発見した。
彼は、天使達と、その上から彼らを守り包みこむ灯りが視野全体に入る距離から彼らの遊戯にみとれていた。
(まるで映画みたいだ、ここだけ神がかっている)
自分は彼らに見られてはならない、と思うのと同時に、こうやって遠くから見守ることが栄誉のようにも感じていたのだった。
森はいくつも、夢のような体を彼に見せた。
人間の(いやもしかしたら彼女も天使かもしれない)高齢だが美しい女性が、彼がみつけた宮殿の中から、彼をみて微笑んでいた。
(まるで海のようだ)
しかし彼は長時間そこには居られないのだった。
なにかが彼を急き立てる。
常にそうやって追われるように、逃げるように、生きてきた気がした、
ただ彼はその瞬間忘れていたのだ。
例えば、
天使達を見つめていたとき、
意識せずに時間を過ごしていたことを。
彼は以前、宮殿が昼間違う顔をみせているときに中に入り、動く写真の部屋で彼の場所を見つけたことがある。
しばしば、宮殿は彼の居場所だった。
その度に夕方になると急かされるように逃げ出してきた彼だが、その居場所に入ってから暫くの瞬間だけは、彼の時間は「無限」だったのだ。
限りなく長く、終わりを無効化する時空間の中に、彼は存在して息をしてきたのだ。
それを、彼は、忘れがちだった。
天使の遊戯場を立ち去るとき、彼はまたむなしさを感じて背中を丸めて歩いていた。
森は海につながっている。
彼を背中から見守っていた。
最初のコメントを投稿しよう!