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「行ってきます」
普通の住宅地にある一軒家。
そこからそう言って出てきたのは、少し小柄な少女だった。
寝癖でぴょこんと跳ねた、肩を少し過ぎる程の黒髪に、黒縁の眼鏡。
顔は長い前髪に隠されている。
彼女は土谷 水城 【つちや みずき】。
今年で15歳になる、高校2年生だ。
この辺りで…否、この国で最も有名な鳳凰学園に通っている。
ある種のステータスシンボルである学園の制服はを着ており、ちょっとした有名人だ。
その白を基調に、青と銀糸でさりげない装飾を施した制服に憧れて、受験に挑戦する人もいるという。
まぁ…彼女は全く気にしていないが。
気にしていたら、もう少し寝癖を何とかしてるだろう。
彼女はいつもの通学路を、マイペースで歩いていく。
てくてくてく。
てくてく…
歩き続けていた水城たが、ふと何かに気づいたように足を止めた。
その視線の先を見ると…いかにも高級~って感じの黒い車が走って来ていた。
別に高級車に興味があるわけではないようだ。
髪に隠されていて見えないが、しかめっ面をしているみたいだし。
「はぁ…またか」
疲れたような、呆れたような溜め息をつき、立ち止まって車を待った。
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