二次創作

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生まれつき病弱な妻が、不治の病にかかってしまった。 医者が言っていた、望みはないと思え、と。 私は愕然とした。 どうして愛する妻だけが、こんなに酷い目に遭わなければいけないのか、と。 入院をして五日を過ぎた頃だろうか。 花瓶の花と私が買ってきた花を甲斐甲斐しく交換する私を、メアリーはその弱々しい笑顔で見た。 「ねえ、私、退院したらお買物がしたいな。貴方と一緒に色々な服を買いたいの」 そうだな、と私は苦笑いしながら相槌をつく。 メアリーはショッピングが好きだ。 それこそ私が呆れかえる程に時間をかけ、その時ばかりは病弱な体も元気良く動く。 「メアリーは買い物に時間が掛かりすぎるから」 冗談めかしながら、今度はメアリーのベッドの横にある椅子に座り、私が持ってきた見舞い品の果物を、バスケットから取り出す。 その時一緒に果物ナイフも取り出し、林檎の皮を音を立てて剥き始める。 私は器用な方ではない。 林檎の皮は途切れ途切れにシーツの上へと千切れ落ち、メアリーはそんな私の不器用さに少し、微笑んだ。 「良いじゃない。貴方に似合う服、いっぱい選んであげるわよ」 彼女の体を蝕む病気については、まだメアリーには話していない。 明るく笑うメアリーを見て、私は心が痛んだ。 治る見込みのない病気なのだ。 いつしか、メアリーも分かってしまうだろう。 病気の事をいつ伝えようが、メアリーの病気が治らない事実は変わらないのに。 病気の事をメアリーに言わないでいるのは、多分、私の中で僅かな願いとして残っているからなのだろう。 メアリーは生き続ける、という願い。 「じゃあ私も、メアリーに似合う服を沢山選ぶよ」 メアリーに悲しい顔を見せるわけにはいかない。 苦笑いをしながら、やっと全て皮が剥けた林檎を、メアリーが食べやすいように一口大に切って、彼女に寄越す。 その形があまりにも不恰好だったからか、メアリーはまた、クス、と笑った。 「ふふ、楽しみね。……ねえ、」 「ん?」 「眠くなってきちゃった。ごめんね、折角来てくれたのに……何でだろう、眠気には逆らえないの」 語尾が少し、頼りないように空気になって、言葉がほぼ聞き取りにくかった。 眠気に逆らえないのは当たり前だ。 病気が体を蝕む中、それに無意識で体が対抗し、知らず知らずの内に体力を使ってしまっているのだろう。 私はそっと、メアリーの体を優しく叩く。
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