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アイツがいなければ、この場所に来ることはなかった。
拓海のことを最低のヤツだと憎んだままだった。
『ありがとう…』
いつも私のこと、一番に考えてくれてたんだよね。
自分の気持ちよりも、私の気持ちを大切にしてくれてた。
そんなあなたを、私は何も知らずただただ憎んでた。
ごめんね
…ありがとう
『これ、隆二君から預かって、代わりにお返しに来ました』
アイツが持ってきてくれたスケッチブックと携帯を、拓海の母親のゆかりさんに差し出す。
それを見てニコッと微笑むと
「二つとも、あなたが持っていてくれない?」
と言った。
『えっ?で、でもこれ、拓海の形見で、ゆかりさんが持っていた方が…』
「拓海はきっと、あなたに持っていて欲しいと思うの」
『ゆかりさん…』
「拓海とって、春香ちゃんはかけがえのない大切な人だもの。今でも変わらないわ」
ゆかりさんが、自分の手を私の手に重ねながら言う。
温かい、優しい手。
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