1729人が本棚に入れています
本棚に追加
『馬鹿隆二ーっ!』
何回も呼ぶ。
こっちをチラチラ見てくる人、クスクス笑っている人。
たくさんの人がいるのに、アイツの姿はない。
やっぱり、だめなの?
『馬鹿ー!』
馬鹿、ってつけたのは、小さな私のプライド。
『っ…出てきなさいよ!馬鹿隆二ぃっ!』
今までの中で、一番大きな声。
精一杯、私の全力。
お願い、届いてっ…
隆二は、現れなかった。
時間…
気づけば、あれから30分経ってしまっていた。
飛行機…行っちゃった…
間に合わなかったんだ…
身体中の力が抜け、その場にペタン…っと座り込む。
だめだった。
遅かったんだ。
もっと、もっともっと私の足が速かったら…。
『…っく、ひっ…』
我慢してた涙が、頬に伝っていくのを感じた。
ハラハラと、次から次に溢れ出して、止まらない。
最初のコメントを投稿しよう!