見知らぬ国

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今夜もまた星を見る 日本では見たこともないような星空 「空…お前と二人で見たいよ」 名前を呼ぶだけでも 胸が苦しい 流れ星に何度願えば、空に会える? 「王子、そろそろ中へ」 「ああ」 こいつは誰だ? 長い髪が印象的なブルーボネットの瞳の少女 「お前は?」 「はい、王子のお世話係りをさせて頂いてます」 「そうか」 「あの…一つお尋ねしても?」 「なんだ?」 「王子は毎日、なぜそんなに切ない顔をして、空を眺めているのですか?」 「切ない…か」 「はい」 「愛する人を忘れないように…顔を思い出しているんだよ」 「愛する人…?」 「ああ…そいつの為なら命を捨ててもいい」 「幸せな方ですね」 「俺が幸せを貰ったんだ」 「では、その人を毎日待っているのですか?」 「ああ…待っている」 「私なら…王子にそんな顔はさせないのに」 突然の言葉に返す返事が出て来ない 「私では…その人の代わりにはなれませんか?」 「代わりはいらないんだよ」 「では、身代わりでも構いません…そんな苦しそうな王子の顔を見ているのは辛い…」 「ありがとう…でも 身代わりにはなれないよ…空は一人しかいないから」 「王子…」 「お前も恋をすればわかるさ」 「私は…昔から王子が好きでした…日本に行かれる前からずっと…」 「お前…名前は?」 「レイア」 「レイア…あの小さかったレイアなのか?」 「はい」 「驚いたな…あのレイアがこんなに綺麗になっていたとは」 「私は昔からずっと王子の事を想っていました…王子が戻られる話を聞いて、お世話係りに」 「悪いな…お前の気持ちには答える事が出来ない」 「王子っ!」 「えっ…」 突然、抱き着かれた だけど 何もときめかない 抱きしめ返す事もない 「レイア…俺は一生、 空を愛すると決めたんだ」 そう言って、体をそっと離した 「申し訳ありません」 「いいよ」 レイアは泣いていた だけど 俺にはどうする事も出来ないから… ただ… 見ているしかなかった
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