見知らぬ国

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はぁ… 部屋に戻り空を見上げた どうしてこんなにいい天気なのに嵐なんだよ! ホントは行きたくないからあんな嘘をついたとしか思えない 「クゥ…どうしよう」 苦しそうに眠る空を見つめながら溜息をつく 嵐が去るのを待ったとしても、船が出せるのは朝だろう 3日かかるのに 2日でなんて無理に決まっている だけど、3日後までに 奏に会わなければ それとも 「おめでとう」と空に 言わせろというのか 「クソッ!」 ここまで来たのに 二人共もう限界なのに それ以上の追い込みをかけるのかよ… 『凱…』 「大丈夫か?」 『うん…ごめんね』 「いいよ」 空が外を見つめていた 『風が湿っぽい』 「えっ、だってこんなにいい天気なのに」 『うん…でもこの風は雨を呼ぶよ』 「わかるのか?」 『日本でも同じ事が何回かあったから』 「そっか…」 夕方になり風が強くなってきた 『凱…』 「大丈夫だよ」 空を抱きしめながら 窓を見つめていた 夜になると強い雨と雷 「まじかよ…」 『すごい音』 不気味な稲妻が光る 雨と風は木々を大きく揺らす (パチン) 『ヒッ!』 「停電か」 『凱…』 空が泣きそうな声で名前を呼んだ 「建物は倒れないから大丈夫だ」 そう言って空を安心させるように抱きしめた 真っ暗な部屋 窓にあたる大粒の雨 そして怯えながら 俺達はそのまま眠りに落ちた もう…先には進みたくはない… だって 待っているのは絶望だから 空をこれ以上 悲しませたくはないんだ
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