見知らぬ国

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「奏、そろそろ準備をしないと」 楓が正装をしてやってきた 「ああ…」 朝から溜息ばかり やはり無理なのか… 「今日、島に入った外部者は?」 「さっき、クリスのフィアンセが使用人とやって来たくらいかな」 「クリス?」 「俺の管轄で一緒に仕事をしている奴だよ」 「そうか…」 空… 俺、どうしたらいい? やはり空を見上げれば 出るのは溜息ばかり 「奏…」 「わかってるよ…今日のパーティーで愛してもいない女性を選べばいいんだろ?」 「もう、俺にはこれ以上は…」 楓は辛い顔をしながら言った 「わかってるよ…ありがとう、今まで頑張ってくれて」 「ごめんね」 「気にするな…」 部屋に戻り、着替えをしながら考える 話を聞かれないように 日本語で楓に言う 「俺が結婚しても…後継ぎは期待出来ないな」 「奏…」 「むしろ、触れない」 「いいんじゃない?それでもさ…」 本当はいいわけないのはわかっている 好きでもない女を抱いて、子孫を残さなければ いけない事くらいわかってるけど… 俺には 出来ないよ… あの指輪は空のものなんだ 指にはめた時点で、空が俺の姫だろ? だから 空以外の女を抱く事は 出来ないし 愛する事もない 「辛いな…」 「奏…」 時間は待ってはくれない 空には月が俺をせかすように輝いていた 「空……」
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