王子と奏

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「空…」 広い部屋 広いベット 高そうなインテリア 王子だから当たり前か… この部屋… どれくらいの広さなんだだろう 俺の家より広そうだけど…何だか落ち着かない 「どうした?」 『うん…ホントに王子様なんだな~って』 「だけど空を想う気持ちはかわらないよ」 『うん』 だけど なんとなく寂しい こんなに近くにいるのに すごく遠い 手をのばせば触れる事が出来るのに 手をのばせない 自分でもわからない感情がわいてくる 苛立ちのような 悲しみのような 嬉しいような 凄く…複雑 多分それは、これからの生活に対する不安と 日本に戻れないと言う 寂しさ 俺はやっぱり日本人で 朝はやっぱり和食で 友達とたわいのない会話をして笑う事が幸せなんだと気付く 奏の事はすごく好き 奏に逢いたくて こうして頑張ってやってきた だけど さっきみたいなパーティーや、王子としての役割をまっとうしている奏を見てしまうと、好きなだけでは一緒に居られないんだと思い知らされる 「空、どうした?」 優しく抱きしめられると、胸がドキドキする それは昔も今もかわらないのに… 『ごめん…なんだか疲れちゃったみたい』 「そうだよな…今日は ゆっくり休むといい」 『うん、そうする』 ベットを降りようとして、腕を掴まれた 「どこ行くの?」 『だって…ここは奏の部屋だから』 「だから空が居るんだろ?」 『そうだけど…やっぱり俺は普通の人間だから、王子の奏とはいられないよ』 「空…?」 『じゃ、おやすみ』 部屋を出て、 用意された客室に向かう 客室もすごく豪華で、 その豪華さとは裏腹に 気持ちは沈んでいった 「クゥ、いるか?」 凱だ 『居るよ』 ドアが開き、凱が部屋にやってきた 『どうしたの?』 「うん」 何となくだけど 凱の言いたい事がわかった きっと、凱も俺と同じなんだ 知らない国にやって来た 戸惑い、不安、苛立ち 俺達は顔を見合わせて 抱きしめあった 今は、奏よりも 長い旅をした凱と居る方が心が落ち着いた
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