王子と奏

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サシャが用件だけを伝えて部屋から出て行った 足音が消えるのを確認して、バスルームへ向かう 『凱…』 凱は 頭を抱えて座り込んでいた 『凱……やっぱり後悔してるんだね』 座り込む凱に近付き、 小さな声で言った 「空…違うよ、後悔なんかしていない…ただ…」 その後の言葉は言わなくてもわかる ただ…楓や奏を騙している事が辛い… 『凱…今なら間に合うよ…昨日の事は全て忘れてしまえばいい』 「空…」 『あれは夢だったんだ…そう…夢…っっ…だっ』 辛いよ… 凱が悩んでる事も 夢で終わらせてしまう 事も… 「馬鹿だなぁ…泣くな」 そう言って抱きしめてくれた 「夢になんかするつもりはないよ」 『凱…でも』 「辛いのは…お前も一緒だろ?」 『凱…』 溢れ出す涙はとまらなくて そんな顔を見られるのが嫌で、何も考えずに シャワーを勢いよく出してしまった 「つめたっ!」 『あはっ』 頭からびっしょりになりながら二人で笑う 目が合った瞬間 視線をそらすことが出来なかった シャワーで水を浴びながら激しいキスをした 熱い体を冷たいシャワーが冷やしてくれた やはり夢ではない 凱はシャワーを止めて シャツからすけた胸元に舌を這わせる 『あっ…っ』 髪から雫が落ちる シャツをめくり指で刺激しながら下半身に手を入れられた 『凱…っ…あっ』 「空…熱い」 『凱もね』 濡れた服はなかなか脱げなかった それはきっと 最後の警告 でも俺達は その警告も聞かず 全てを脱ぎ捨てた 『凱…もう俺達、地獄に堕ちるね』 「そんなのは、昨日からわかっていたよ」 『うん』 「一緒に堕ちよう」 そう言って、一気に凱が入ってきた 『あっっ…っ』 夢中でしがみついている人は、奏ではなかった 「空…」 こんなに激しく抱き合っているのに 二人共 愛しているとは 言わなかった 違う…言えなかったんだ そう 今はまだ言えなかった…
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