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「楓、ちゃんと振り込んだか?」
机の上に積まれた書類をヒラヒラさせながら言う
「ん~、多分…あの二人は気付かないかもね」
「だよな…」
「まさか、振り込んだ金額が緯度と経度になってるとは思わないよね」
「やっぱり…」
連絡手段がない二人は
手切れ金と言う事で
振り込んだ金額は
国を示す緯度と経度だった
「わからないよな…」
「うん…凱が経度で空が緯度なんて気付かないと思う」
「でもさ、半端な額だと思わないかな」
「無理だと」
「はぁ…考えた末の作戦だったのに」
「あの二人がこの国に
辿り着けるとするなら…奇跡に近いね」
「だよな」
やはりこの国に二人を
呼ぶのは無理なのか…
「何で携帯が使えないんだ!」
「電話は盗聴されてる可能性があるしね」
「空は元気かな……」
雲ひとつない空を見上げながら呟く
「奇跡を信じてみるのもいいんじゃない?」
「お前は寂しくないの?」
「もちろん寂しいし、今すぐ逢いたいよ」
「そっか」
「でも…俺は凱の行動力を信じているんだ」
「行動力か…迷子にならなければいいけどな」
「それだけが心配…」
『凱~!』
完璧迷子…
ジュースを買いに来ただけなのに…迷子になった
『凱…どこだよ…』
まだ日本すら離れてないのに…
てか、まだ空港に行く途中だし…
疲れた…
ベンチに座り込み溜息をつく
「クゥ!捜したよ~」
『凱!』
「てかさ…どんだけ方向音痴なんだよっ!」
『だって…』
「いいか、絶対手を離すな!」
『わかった…』
凱に手をしっかり掴まれて、空港へ向かう
『凱…凱…』
「なんだ」
『もしかして…パスポートとか』
「もちろん!…まてまて!まさか…」
『あは…は…忘れた』
「おい!!はぁ…帰るぞ」
『ごめんね』
「いいよ…もう怒る気力もない」
一体いつ日本を脱出出来るのか…
先はまだまだ長い二人だった
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