選択

18/24
前へ
/620ページ
次へ
言葉通り、白の世界はあと少ししかない。もう時間が来たようだ。 咲良は涙を拭いて、白い世界へ歩き出した。 「…奇跡は起こせるものだ。お前たちが信じたのならば、な。」 「……はい。それじゃあ、行きますね。…さようなら、クレディア」 ああ、と短く、クレディアも答えた。 咲良は眼を閉じた。 信じろ……、私はあの世界へ戻るんだ。仲間たちは私の帰りを待っている……。 白の世界が輝き、咲良を包んだ。黒だった世界が徐々に消えていく。 「…すまなかったな、咲良…。……ありがとう…」 えっ? と咲良は顔を上げた。同時に白の光が一層輝き、辺りを真っ白に染めた。 その時の一瞬が、咲良の眼に焼き付いた。 それは、すべてから解放されようやく自由を手に入れた、クレディアの微笑みだった。  
/620ページ

最初のコメントを投稿しよう!

63人が本棚に入れています
本棚に追加