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言葉通り、白の世界はあと少ししかない。もう時間が来たようだ。
咲良は涙を拭いて、白い世界へ歩き出した。
「…奇跡は起こせるものだ。お前たちが信じたのならば、な。」
「……はい。それじゃあ、行きますね。…さようなら、クレディア」
ああ、と短く、クレディアも答えた。
咲良は眼を閉じた。
信じろ……、私はあの世界へ戻るんだ。仲間たちは私の帰りを待っている……。
白の世界が輝き、咲良を包んだ。黒だった世界が徐々に消えていく。
「…すまなかったな、咲良…。……ありがとう…」
えっ? と咲良は顔を上げた。同時に白の光が一層輝き、辺りを真っ白に染めた。
その時の一瞬が、咲良の眼に焼き付いた。
それは、すべてから解放されようやく自由を手に入れた、クレディアの微笑みだった。
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