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かろうじて動くのは頭くらいだろう。
「そうなのか……」
「あ、でもちゃんと治しますからね。私、まだやりたいことがたくさんあるんです。」
そんな会話をしているうちに、窓の外が明るくなってきた。夜明けのようだ。
「あ、そーいえば、咲良が目覚めたら、すぐに教えてくださいって言われてたんだっけ。」
「じゃあ、早く行ってください。向こうが困りますから。」
病室を出る龍一に、咲良は微笑んで見送った。
にぎやかな龍一がいなくなったため、病室内は静寂に包まれた。
「…クレディア……。」
咲良はふと、生死の境界にいた事を思い出した。クレディアの最後の顔が蘇る。あんなに優しく笑ったクレディアは、初めて見たものだ。
出来ることなら、クレディアとずっといたかった。もっとクレディアの事を知りたかった。クレディアにも、生きることの楽しさを味わってほしかった。
本当に…最初は、ただの敵でしか見てなかったのに、いつからこんな感情が生まれたのだろうか。
――お前を、信じてみようと思ったからだ――
もしかしたら、咲良もクレディアのことを信じていたのかもしれない。
龍一たちと同じように、失いたくない仲間として戦ってきたのかもしれない。
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