エピローグ

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咲良は普通の生活を出来るようになるまで、半年かかった。 傷は雫のおかげで跡形も残っていないが、限界まで体を使いすぎていたため、その反動が長く続いたのだ。 それでも咲良は、勉強の遅れた分を見事に取り戻し、前と変わらない雫とのトップ争いをしている。 いつの間にか対人恐怖症を克服したようで、今では誰とでも明るく振る舞えるようになった。 龍一は親戚の援助を受けながら、彩香と2人で生活している。 最近は、親戚に頼ってばかりではと、バイトを始めたようだ。 そのせいで、授業中の居眠りが目立つことは、からかうネタとなってしまった。 そして彩香は、兄の手助けをしようと家事を率先するようになった。咲良や雫に教わりながら、確実に一人前になりつつある。 中でも、彩香の作ったホットケーキは格別においしいとの評判だそうだ。 雫は、新たに借りたマンションで義妹の鈴音と仲良く暮らしている。 先日、鈴音の両親があの事件で亡くなったとの手紙が届いたのだ。 独り身となった鈴音を、雫の親が養子として引き取り、新たに“森川 鈴音”となった。 愛されなかった両親を亡くし、愛してくれる家族に加わったことは、鈴音にとって複雑な気持ちにさせただろう。 それでも、今の暮らしをとても気に入っている。  
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