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6.
「美波とは保育園の頃からよく遊んでて、仲よくて、それは美波が死ぬまで変わらなかった」
公園を出て、夕陽の沈む景色を右手に坂を上ると木々に囲まれた白い校舎が見えてきた。けんちゃんは私と顕現したままのクロスケの前を歩きながらポツポツと話してくれた。
「確か小学二年生の頃だったと思う。タイムカプセルっていうのに憧れて、大人になったら開けようねって二人で別々に埋めたんだ」
美波は私の中で静かにけんちゃんの言葉を聞いていた。何だろう。穏やかな波動が伝わってきて切なくなる。
「美波は公園の――さっきお姉さんが掘ろうとしていたところに、俺は学校の桜の木の根元にね」
「何故、別々に?」
けんちゃんはクロスケを振り返った。西日がその姿を茜色に染め上げる。
「理由なんてないよ。一緒に埋めて一緒に掘り返すのも良かったんだけど、その時は宝探しにも憧れてたっていうか」
だから、それぞれ埋めた場所を紙に描いて「大人になったら開けようね」ってその地図を交換した。赤いバツ印の下には成人したお互いへ向けたプレゼントが眠っているはずだ。
「君は、何を埋めたの?」
「さあ、七年くらい前だし……忘れちゃった」けんちゃんは悲しそうに目を伏せる。「でも、掘り返せばすぐにわかるよ」
今、私たちはけんちゃんが美波へ宛てた「宝」を掘り返すべく、彼らの母校へと向かっていた。本来の二人の約束では成人したら開けることになっていたが、美波にその時はもう来ない。それに、私は美波と宝物を見つける約束をしてしまったから。
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