Because

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惣菜つくるだけの仕事だけど 2種類あって すぐに店頭に並べる惣菜つくりと 冷蔵庫に保存しとく惣菜つくりとあって すぐのやつはいいんだ 簡単だから 保存しとくやつ いろいろめんどくさいです 消費期限書いたり 責任者名書いたりね。 だからそっちはあんま好きじゃない まあでも好き嫌い言ってられないし その保存しとくやつの仕事 してたわけ そしたら裕さんが センターから帰ってきた 「お疲れ様です」 初めて話しかけた言葉です 略語にするならHHKです。 彼は驚いたように こっちをみた 「しゃべった、、、」 いや、、、 そりゃしゃべりますって、、、 人間だもの、、、 私は思わず笑ってしまった 彼も笑った 初めて会ったときのクールな顔からは 想像できないような 無邪気な笑顔だった 「大変でしょ、仕込みって」 彼は一気に打ち解けたように 私のそばに来た 一度笑いを共有すると 壁がなくなる人なのか、、、と感じた 「ああはい大変です」 「いつからやってんの?バイト」 「ちょうど一か月くらいですね」 「手慣れてないね、入って結構経つのに、なんか」 彼は素晴らしく倒置法を用いた会話を連発する人でした たぶん思った言葉を 頭ん中で組み立てずに 口から出してるんだと思われます 「週2回しか入ってないんで まだ要領がつかめなくて、、、」 「あーそっかそっか。そりゃ学生さんはそうだよね。」 「笠井さんは違うんですか?」 「俺は毎日だもん」 「毎日?」 学校は? と心んなかで思った 「学校いってないんだよね、俺。 ほんとだったら大学生だけどさ、高校にも行ってないし」 いま心ん中のぞきましたか? 「そうなんですか、、、」 「てかタメ語でいいよ、堅苦しいじゃんか謙譲語」 敬語です。 特に謙譲してませんし。 裕さんは第一印象を 見事に打ち破ってみせた。 クールで近寄りがたい人だなんて 思ってた私は見抜く力がない
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