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『ん?…どうかしたのかい?』
『あ…い、いぇ……』
猛はもう一度店主の額を確認した時には既に数字は消えていた…
(に…【25】ってッッ…!確かに【25】って出たよなッッ!?)
猛のこれまでの経験でこのような少ない数字に出くわした事も何度かありそう珍しくもない…しかしそれらは全て見ず知らずの通行人が多く、自分のこんな身近な近辺で100を切る2桁の数字が浮き上がったのは記憶にある所ではあの祖父の【90】という数字以来だった…
『あ…あぁ…』
猛は思わず本屋の出入口で足を止めてじっと店主を見てしまっていた…
『本…探そうか?』
『あ…いや…いぇ、…』
店主はそんな奇妙な猛の行動にも何ら動じる様子もなく客もいないしまぁ店でゆっくりしていったら?と側にあったパイプ椅子を優しく猛に差し出した…
『あ……』
(駄目だよ僕ッッ、じ、寿命があと【25】日しかない人と何話すんだよッ、帰れ、帰るんだ僕ッッッ!)
猛は必死に自分に言い聞かせていた…かかわりたくないッ、命の終わりがはっきり分かってしまった人とは知り合いになりたくないッッ、しかし必死の抵抗も虚しく結局猛は店主の優しい笑顔に負けてしまった…
『…何か飲むかい?』
レジカウンターの隣で猛はチョコンと腰掛け店主からパックのフルーツジュースを受け取った…
『あ…ありがとう…ご、ございますッッ!』
『偉いね…きちんと御礼言えるんだ…フフフ、最近の子供はそんな簡単な事すら出来ない子が増えてきてるもんね…親の躾かなやっぱり…ハハハ』
眼鏡越しに店主は笑った…
(いい人そうなのに…どうして死んじゃうんだろ…)
猛はやり切れない小さなため息を付いた…
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