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(ほんと客来ないよなこの店…)
猛は店主とたいして会話を交わす事もなくただじっと静かな店内に座っていた…客がレジに来て会計をしたのをきっかけに猛はどさくさに紛れ店から出ようと目論んでいたのだがこうも客が来ないとその計画もまるで水の泡だ…
『お客来ないね…ハハハ…』
難しそうな本を読んでいた店主が退屈そうにしている猛に呟いた…
『あ、別に引き止めてる訳じゃないから帰ってくれても構わないよッッ、ほら、あんまり静かだと人恋しくてさッ、ハハハ…』
『あ…あのぅ…おじさんは…』
猛は声を絞り出した…
『…ん?』
『おじさんは…そのぅ…健康…ですか?』
『え?…あぁうん、健康だよッ!…どして?』
『あ…いぇ…す、スミマセン…』
ほぼ初対面で何を馬鹿な質問をしているのか、猛は自分が恥ずかしくなり思わず肩をすぼめた…
『あ…そうかなるほどッ、もしかして君は将来医者を目指してるとかッッ!で、医学書の辺りをいつも…』
『!ッッ、いッ、いぇそういうんじゃないん…デス…はい…』
本当の事を言えばこの店主の心臓が飛び出すか何を馬鹿な事をと嘲笑われるか二つに一つだ…猛は余計な事を言わぬようまた口を貝にした…
(そうだよ…何もみんながみんな病気で死ぬとは限らないよな…僕が見えるのは死に方ではなくただその人間の残りの寿命だけだもんッ、交通事故の人もいれば啓太や康太みたいに火事で焼かれちゃう事だってある…人間の最期の状況なんて五万とあるもんな…)
猛は店主の横顔を見ながらそう心で呟いた…あと【25】日間、この人は一体どんな人生を送るのであろうか…考えないようにすればする程猛の脳裏にその事がべったりと餅のように張り付いてしまっていた…
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