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『兄ちゃんてさ、自分の寿命知りたいって思った事ある?』
弟賢太が猛のトランプの札を抜きながらふとそう呟いた…
『はぁ?…自分の…寿命ぉ?』
『うん…!ッッ、おッ、やったぁ~揃ったァ~ババ抜き勝負僕の勝ちぃ~ッッ、はい100円ッッ…ニシシシ…』
賢太はまるで江戸時代の商人のように猛の前で手を擦り合わせた…そういえば今まで人の寿命ばかり見続けて来て取り立てて考えもしなかった…《自分の寿命》がいったいどれくらいなのか…
『人の寿命ばっか見てると自分の寿命が一日一日減ってたりなんかしてッッ、』
縁起でもない事言うな、と猛は賢太だけにトランプの片付けをさせるとベッドで横になった…
『けどその超能力を発揮させる為に神様は兄ちゃんに託したんじゃないの?なら兄ちゃんの寿命はとてつもなく長い…て事になるのかな~…兄ちゃんの後を継ぐ後継者が現れない限りねッッ!』
『後継者ぁ?…こんな最低最悪な超能力に後継者なんて要らないよッッ、そんな馬鹿な奴居てたまるもんかッ!』
猛はお腹空いた~と台所の冷蔵庫に食べ物を探しに階段を駆け降りた…
『チェッ、何だよママ…旅行行くんなら何か食べ物置いてってくれよ~ッッ!』
母貴子は地域の自治会の一泊旅行に朝早くに出掛けて行った…高橋家今夜の夕飯は当直明けで今寝室で眠っている父孝輔と賢太三人で外食する事になっていた…猛は孝輔が酒のアテに大事に置いていたサキチーズ棒を冷蔵庫から取り出すと中身を食べながら部屋に戻った…
(自分の寿命か…)
猛は部屋に向かう途中にある廊下の大鏡の前で立ち止まった…
『…………見える訳ないかッッ、ハハッ…』
暫く鏡とにらめっこした猛は苦笑いを浮かべながら賢太に取られた100円奪還の為にトランプ勝負の戦場に向かった…
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