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『やぁ君か…いらっしゃい…』
(…やっぱりいつ来てもガラガラだ…タハハ)
それから数日後、あれ以来雛形の事が気になり寝不足の日々が続いていた猛は意を決して雛形秀作の本屋に再度足を運んだ…店主の雛形秀作はいつものように青いエプロンをして本棚の書籍の整理をしていた…
『こ、こんにちは…こないだはじゅ、じゅ、ジュース有難うございましたッッ!』
『あ~偉いッ、きちんと御礼言えたね?フフフ…ちゃんと躾けておられるご両親の顔が見てみたいよッッ…』
(そ、それはやめといて下さい…幻滅するから…)
猛は思わずタンクトップ姿で笑う父の姿を想像してしまった…
『♪…フンフン~♪…』
いつも笑顔の雛形秀作だったが今日は鼻唄まで飛び出しいつにも増して上機嫌のようだ…猛にはこの笑顔の男性があと20日余りでその尊い命を失ってしまう事などやはり想像も出来なかった…
『おじさん…お客さんもいないのに嬉しそうですね?何かいい事ありました?』
自分でもかなり積極的な冒険だと思った…何せこの何年もの期間猛が自分から他人に言葉をかける等という事は殆どなかったからだ…
『ん~正直だね君のそのコメントッッ、益々気に入ったよ~』
眼鏡をクイッと指で上げると雛形秀作は脚立から降りて来た…
『実はねッ、凄くいい事あったんだぁ~』
雛形秀作はまるで子供のように猛に擦り寄って来た…
『……?』
雛形は奥から何やら写真立てらしきものを猛の目の前に置いた…
『礼儀正しい君にだけ教えてあげるよッ、フフフ…』
雛形は猛に写真立ての中にある写真をそっと見せた…
『……女の子?』
『そっ、私の娘だッ、ククク…可愛いだろ?』
写真にはまるでお伽話にでもでてきそうな真っ白なドレスを着た少女が一人写っていた…
『娘…さん…』
確かに父親によく似ていて目鼻立ちが整ったなかなかの美人だった…
『ずっと離れて暮らしてたんだけどねッ、今回念願叶って一緒に暮らす事になったんだッッ…』
『…一緒に…暮らす…』
猛は雛形の鼻唄の理由を知り胸がつっかえる微妙なシコリを感じていた…
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