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『おじさん恥ずかしながら離婚しちゃってさ、あ…離婚って解る?夫婦が別れちゃう事ッッ…つまり例えば君のお父さんとお母さんが…』
『あ…はい、解ります…ハハハ』
(縁起でもない…)
雛形はいつものレジカウンターに腰掛けると何故話そうと思ったのか解らないが小学生の猛に自らの離婚経歴を語り出した…妻とは前職の輸入雑貨会社で知り合いになり結婚、その後すぐに娘が生まれた…
『で…離婚して娘さんはおじさんの奥さんが引き取った…』
『そうだ…飲み込み早いね、さすが将来医者を目指しているだけの事はあるッ!』
(いやだからッ…目指してないってッッ!)
『妻は…いや、元妻は輸入雑貨の会社を一人で設立し、それが見事当たっちゃってさ…海外にも支店とか沢山出すようになって…私は反対したんだ、出産を機に会社を辞めて三人で穏やかに暮らそうと提案したんだが妻には聴き入れてもらえなくてね…最終的には離婚して幼い樹里は妻が引き取る事になっちゃって…私はというと回りに回って今は結局このザマなんだ…ハハハ…』
雛形は伝票の束をパラパラと手持ち無沙汰のようにめくっては直しを繰り返していた…
(………)
猛はじっと雛形の話を聞いていたが半分程しか理解出来ずにいた…でも一つだけ言える事、やっぱりいかなる理由があるにせよ離婚は絶対いけないッッ!確か藤谷若菜が言っていた言葉だったっけ…
『でもね、最近になって樹里がお父さんの所で一緒に暮らしたいって言ってくれてねッ、淋しがり屋のお父さんを一人にしとけないって樹里のヤツ…ウゥ…』
雛形は思わず涙を拭った…
『そうですか…で…樹里さんとはいつから暮らす予定ですか?』
そうだそれだよ忘れてたッ、思わず雛形の人情話の余韻に浸る間に猛は最も大事な事を忘れてしまっていた!雛形にはあともう【20】日という時間しか残されていない事を忘れていたッッ!
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