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賢太にはあぁ言ったがやはり猛は手をこまねいて雛形の死を黙って見ている訳にはいかなかった…
(あともう15日しかないんだッ、よしッッ……!)
本屋の前に立つと猛は一度大きな深呼吸をした…
(何も知らずに死んでくなんて…見て見ぬフリなんて僕には…やっぱり出来ない…)
猛の初めての勇気だった…何を言われても引き下がらないッッ、猛の中で感じた事のない猛烈な闘争心みたいな物が一気に膨れ上がった瞬間だった…そして同時にもしかしたら天から貰ったこの忌ま忌ましい超能力は本当はこんな時の為に使われる物ではないのだろうか、その為に授かった超能力なのではと猛は一人理解しようとしていた…
『やぁいらっしゃい…今ね、樹里の部屋のカーテンどれにしよっか考えてたんだよ…フフフ…』
やっぱり客が一人もいない店内に入ると雛形はいつものカウンターに座り通販カタログを見ながら娘との暮らしに思いを馳せていた…
『おじさん…ちょっといい?』
『ん?何だい…フフフ、花柄も捨て難い…』
『おじさんッッ、大事な話があるんだッッ!』
猛の迫力に押されたのか雛形はカタログから目を離し猛のほうをじっと見た…
『…し…信じてもらえないかも知れないんだけど…お、おじさん…』
『ん?…信じるよッ、賢い君の事は何だってさッッ…』
『お願いッッッ、これは冗談でも何でもないッッ、だから真剣に聞いてねッッ!』
猛は心痛な面持ちで笑顔の雛形に近付いた…
『このまんまじゃおじさん…おじさん樹里ちゃんに逢えない…』
『え?…ハハハ何を言い出すかと思ったら…どうしてだい?』
『………』
『ん?……』
『…あと15日後…おじさんは死んでしまうから…ッッッッ!』
『…………え……?』
本屋の店内に異様な静寂が漂った…
『死んで…しまうから…し、し…』
猛の膝がガクガクと奮え出した…
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