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『そぅいやぁ幼稚園ん頃この公園でも猛とよく遊んだよなぁ…』
若菜は傘の水滴をバシャバシャと払った…
『そ、そうだっけ…』
『ま、物覚えの悪りい猛は何にも感じてないって思ってたがよッッ…』
『ねぇ藤谷さん、その訳の解んない《ヘンテコちゃきちゃき江戸っ子弁》もう止めたら?それに自分の事って言うのも…やっぱり女の子なんだし、変だよッッ!あ、イテッッ!で、その口より速い手もッッ、イテッ、痛いッッ!』
『うるせぇッッ、これは俺のライフワークだ文句あっかこの野郎ッッ!』
何度も頭を叩く若菜に猛は分かった分かったと制止させた…
『んだよッッ、前は一緒になって男みたいに遊んでたのによッ、やっぱり変わっちまったよな猛…』
若菜が寂しそうに傘の先から出て来る水滴でコンクリの地面に絵を描いていた…
(そりゃ誰だって変わるって…人の寿命見えちゃう最低な超能力身についたらさッッ…)
猛はそっぽを向き遠くを見つめる若菜に心の中で呟いた…
『その買い物…お父さんの?』
猛はふと若菜の側にあるスーパーの買い物袋に目をやった…
『あぁこれ…味噌汁作ろうと思って味噌買いに行ったら豆腐買うのも忘れてよ…でもって豆腐買いに行ったら今度は葱買うの忘れて結局家と市場の3往復マジだる~…』
『大変だね、藤谷さんちも…料理とか洗濯とか全部藤谷さんがするんだろ?』
猛は苦笑いした…
『別に大変じゃねぇよッ、大変だなんて感じた事なんてないっつのッッ!』
若菜の両親は小学3年の時に離婚していた…原因は母親の男遊びで若菜は夫と自分を棄てて家を出て行った母親の事を余り口にはしたがらなかった…
『なぁ猛よぉ…』
『……ん?』
『俺今まで猛に嘘ついた事あっか?お前に隠し事した事あったか?』
若菜は一度大きな背伸びをした…
『多分…ない…』
『だよな…して俺も猛の事知らない事殆どなかった…お前が今そん心の中に抱えてる悩み事以外はな…』
(………)
雨は次第に小降りになって来た…
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