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『あなたがパパを見つけてくれたんですね?』
集中治療室から出て来た樹里が猛の前に来ると樹里は静かにありがとうと頭を下げた…
『あッ、お、俺先にパトカー乗ってっからッッ』
気を利かして若菜が警察官と先にパトカーの方に歩いて行った…
『…お役に立てなくて…ゴメンなさい…』
猛のその言葉には色んな意味が詰まっていた…改めて見ると雛形樹里は長い髪を上品にカールしたやっぱりどこか父雛形秀作に似た優しい顔だちの女の子だった…
『パパから少し聞いていました…とても優しい男の子がよくウチの本屋に来るんだ~なんて…もしかしたらあなたの事かなって…』
『や、優しいだなんてそんなッッ…』
樹里は少し微笑んでまだ涙粒で濡れている目頭をハンカチで拭った…
『人間の死なんてほんと予告もなく突然なんですね…』
『………』
『今私海外にいてパパとは離れて暮らしているんです…けど再来月に日本に帰ってパパと一緒に暮らす予定だったんです…』
猛はただ黙って樹里の言葉を吸収していた…
『こんな事になるならもっと早くに…』
『………』
パトカーから警察官が猛に呼び掛けた…
『あ、じゃ、ぼ、僕…行きます…』
『あッ、ゴメンなさい…引き止めちゃって…本当にありがとう…あなたがパパをすぐに病院に運んでくれてなきゃ私パパの最期に立ち合えなかったかもしれない…本当に感謝してます…』
樹里はまた深く頭を下げた…猛も頭を下げるとクルリと踵を返した…
『人の寿命が見えたら…こんな悲しい目に遭わなくて済んだのに…』
樹里はポツリと呟いた…猛は立ち止まり振り向き様樹里を見た…
『…お父さんは…』
『!ッッ……』
『お父さんは樹里ちゃんの事心から愛してましたよ…僕鈍感だけど…それだけは、それだけは痛い程伝わりましたから…』
『……』
猛は樹里にそう言うとゆっくりとパトカーに向けて歩を進めた…
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