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『ねぇパパ聞いてよ~ッ、角の八百屋の奥さん猛の事根暗で無愛想な子供だって近所に陰口叩いて回ってるのよ~ッ、酷いと思わないッッ?ねぇ~…』
『おぃ貴子ッッ、猛の誕生日だって日に何もそんな事本人の目の前で言う事ないだろうよッ!なぁ猛?』
貴子の訴えに猛の父親である孝輔はアンアンと面倒臭そうに相槌を打った…猛の12歳の誕生日の今日、食卓には貴子が腕によりをかけて作った料理の数々が並んだ…
『すっげぇ~母ちゃんッッ、僕の大好物ばかりだッッ!』
唐揚げを摘み上げる賢太の手を貴子はピシャリと叩くと今日の主役はお兄ちゃんッッ!と行儀の悪い賢太を睨みつけた…
『チェッ、チェッ…ふんっだッッッ!』
『どうした猛…元気ないじゃないか…自分の誕生日の日くらい元気出しなさいッッ!』
高校の文化祭の準備で忙しい体育教師の父孝輔は職場のままのトレードマークである真っ赤なジャージ姿でガハハと下品に笑った…
『…お誕生日おめでとうッ、猛ッッ!』
孝輔、貴子、賢太の三人がクラッカーで盛大に猛の12回目の誕生日を心から祝ってくれた…
『…あ、ありがとう…』
『ほぅら顔上げてッッ、いつもそうやって俯いてばかりいるから八百屋の女将にも陰口叩かれるんだッ、男は胸張って生きろッッ、ホラ父ちゃんを見ろ、どうだこの筋肉ッッ、ガハハ!』
『………』
(僕だって出来る事なら胸張って生きたいよッ、けどそんな事したら見なくていい余計な人の寿命まで見ちゃうじゃんかッッ!)
猛は力無くケーキの上のキャンドルの火を消した…
(やっぱり苦しいよ…こんな超能力僕要らないッッッ!)
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