⏳優しい奇跡⏳

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『ん~順調順調ッ、…母胎も安定してるし赤ちゃんも元気に育っていますよ~ッッ!』 そう笑って言うと少しいやらしい目をした年輩の産婦人科医は三枝真理子のお腹から超音波装置を外した…隣で猛の母貴子が超音波画像を見ながらウワ~あれが赤ちゃんだわ~とまるで初産婦のようなリアクションをしている… 『ちょっとママ、ママが産むんじゃないんだからそんなに真剣に見ないでよ恥ずかしいッッ!』 『別にいいじゃないの、ね~!ホラ猛も見て見なさいッッ、何事も社会勉強社会勉強ッッ!』 貴子は猛の手を取り画像を見せながらあれが頭、あれが脚、その真ん中のがオチンチンよ~と一人で興奮している (勘弁してよッタク…ハァ~…) 年が明けたある寒い土曜日の早朝、母貴子の姪っ子である三枝真理子から連絡があり貴子に産婦人科の定期検診に付き合ってほしいとの電話が入った…三枝真理子は結婚2年目の主婦で猛の従姉弟に当たる…従姉弟とはいうものの結婚式に呼ばれた以外は余り真理子との親しい交流はなく、猛は真理子には取り立てて強い印象はなかったが真面目で大人しい性格だという事は記憶している… 『今はちょうど7カ月に入ったばかりだから予定日通りに生まれそうですねッ…』 三枝真理子は産婦人科医師に丁寧に頭を下げると診察室を出て待合室にヨイショと腰掛けた… 『良かったわねッ、順調そうじゃないッ…』 『うんッ、悪いね伯母ちゃん、わざわざ付き合わせて…』 (んとだよッ、ッタク…僕までどうして…) 『タケちゃんも悪かったわねッ、何か大事な土曜日使わせてッッ…』 『!ッッ…えッ、い、いや…アハハ…だ、大丈夫ッッ!アハハアハハ…』 (あ~焦っタァ~…!) 真ん中に座る貴子を通り越して真理子の顔が猛の視界に入って来た…パステルカラーを基調とした可愛いらしいピンクの待合室はさすが癒しの空間産婦人科といった所か… (僕もこうしてママのお腹の中から生まれて来たんだナァ~…) 猛は真理子の盛り上がった丸いお腹を眺めながらポソリと呟いた…
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