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(僕はこうしてこのまま誰の顔もまともに見れずにこれからもこうしてビクビクしながら生きていかなきゃいけないのかな…)
母貴子に誕生日プレゼントに買ってもらった真新しい運動靴を履き猛は今日も誰とも会話をする事もなく校門を後にした…
(今日も先生生徒含めて7人もの寿命を見てしまった…ハァ~…)
『猛ぃ~高橋猛~ッッ!』
後ろから猛を呼び止める甲高い声が聞こえた…
『……ッッ!やばいッッッ!』
『何でいつも慌てて帰るんだよッッ、家ん方向同じなんだからたまには一緒に帰ろうぜッッ!』
息を切らせながら猛のクラスメートの藤谷若菜が猛の前に立ちはだかった…藤谷若菜はスカートを履かない男勝りの性格で引っ込み思案の猛とはまるで正反対の竹を割ったようなボーイッシュな女子児童だった…
『いいだろ?一緒に帰っても…』
『いいけど…』
『だぁ~らさッ、人と話す時はちゃんと相手の目を見るッ、ホラ…出来んだろッッ!?』
若菜は猛の頬っぺたを指で持ち上げると自分の顔を見てみろと叱咤した…
『あ……ウッ…』
(よ、良かったぁ~…藤谷さんにはまだ出てないや、寿命…)
『そうだよ猛ッ、やれば出来んじゃんやればッッ、幼稚園の頃はお前一番腕白でよく俺とつるんでジャングルジム征服してたじゃんかッ、あん時の活発な猛は何処に行っちゃったんだっつの!小学生なった途端何ぁ~んか小さくまとまっちゃってよッッ…ホント頼むよったくッッ!』
オーバオールに黄色のシャツの藤谷若菜は頭をかきながら猛のすぐ前を歩いていた…
(藤谷さん…ヤッパこんな煮え切らない性格の僕の事嫌いなんだろなぁ…)
猛にとって藤谷若菜は幼稚園の頃からの知り合いで当時は毎日のように遊んでいた…
『何か解んないんだけどよ…悩み事あんなら俺に…言えよなッッ…』
『…アハハ…あ、ありがとう…』
若菜の背中に猛は小さく御礼を言った…
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