-PROLOGUE-

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「がああああ!」 森の中、一人の青年が胸を貫かれ倒れ伏した。 肩まで伸びた美しい銀髪は血がこびりつき、壮麗な顔には裂傷がついている。 左目は綺麗な蒼色している しかし右目は獣の様に鋭く形作り、角膜は真っ赤に染まってしまっている。 その中にポツンと黒い瞳孔があるだけだった。 左腕だけは綺麗に保っているのが奇妙だった。 全てが黒く染まった右腕は、血のように流れる赤いラインがついている。 その右手は獣のそれより凶悪な爪を生やしている。 さらに右肩口からは黒い霧が吹き出したような翼が生え、形作っている。 血塗れの体に鞭を打ち、立ち上がろうとする。 しかし、その眼前に一人の別の青年が立ちはだかった。 銀髪の青年の眼前に、長く節くれた杖を突きつける。 真っ赤な短髪に、右耳にピアスをつけている。 しかし、整った顔だちには優しさなど一ミリも含まれていなかった。 「一つだけ聞きたい」 赤髪の男は銀髪の男に話しかけた。 胸を貫かれ、確実に致命傷を負っているはずの銀髪の男は顔を上げた。 「そこまでの『能力』がありながら、何でお前は一人で生きて来た?」 「……」 しかし、銀髪の男は何も答えなかった。
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