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赤髪の男はその様子を見ると容赦なく、節くれた長杖を振り上げた。
そして銀髪の男の穴の開いた胸に突き刺した。
「あ……が……ああああああ!!」
銀髪の男は、突き刺された胸から赤い鮮血を撒き散らし、悲鳴を上げた。
「答えろ。なんで人を殺した?なんで一人なんだ?」
赤髪の男は容赦なく杖を引き抜くと、再び問いかけた。
なにやら、尋常じゃない様子だった。
銀髪の男は、どこまでも空虚な瞳をもたげ、赤髪の男の瞳を見た。
その瞳には、何の感情も伺えない。
しかたなく、銀髪の男は口を開いた。
「……一人で生きなきゃいけなかったから」
赤髪の男の瞳に、初めて動揺の色が浮かんだ。
銀髪の男はそんなこと構わず続けた。
「俺は……一人になってしまった……。
一人は辛い……一人は怖い……一人は悲しい……。
そして……生きていくためには……仕方がなかった……」
銀髪の男の言葉に、赤髪の男は杖を落とした。
乾いた音が辺りに響く。
銀髪の男は、何が起こったのかわからず、顔を上げた。
赤髪の男は、泣いていた。
赤髪の男は杖を落とすと、血塗れになるのも構わず、銀髪の男の体を抱き上げた。
銀髪の男の頬に、赤髪の男の涙が落ちる。
「わかった……だったら僕が仲間になってやるっ。
お前の友達になってやるっ。お前の一人ぼっちの寂しさを、僕が一緒にいて軽くしてやるっ。だから……もうこんなことは止めろ……」
赤髪の男は震える声で言った。
銀髪の男は、何を言われたのかわからなかった。
しかし、自分は一人ではなくなる、というのはわかった。
知らず知らずのうちに、銀髪の男は泣いていた。
生まれて初めての、涙だった。
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