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順藤恵莉(すどうえり)。大学に入って初めて出来た、一番の友達、今では親友とも呼べるような間柄の彼女だけは、皆と違う反応を示した。最初彼を見たときは、皆と殆ど同じだったのだけれど、話をするにつれて、彼女の顔から笑顔が消えた。そして彼女は、私の耳元で囁いた。
「彼、普通じゃないよ」
私はその言葉の意味がわからなかった。彼は普通じゃない。そんなこと、見ればわかることだ。あれほどできた人間はこの世にそうたくさんいるものではない。だから普通の人とは違う。普通じゃないのは当たり前なのだ。けれど、彼女の表情からその言葉は良い意味として捉えることができなかった。彼女は彼を恐れている。そう見えた。
「だって、会ってからずっと笑ってるんだよ? そんなの人間として間違っているよ」
それからだ。私は彼女と口を利かなくなった。彼女が話しかけてきても無視した。間違っているのは彼ではなく、恵莉の方だ。彼は、私の友達だからと、笑顔を絶やさないでいてくれたのだ。その行為をおかしいなどと言うなんて、人間として間違っているのは彼女の方だ。
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