順藤 恵莉 〔Ⅰ〕

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 真夏の日差しのとても強い日、一緒に食事をしていたときのことだ。私の好きだった人が亡くなってしまったことを話すと、彼女はとても心配してくれた。彼のために笑って生きようと言ってくれた。そのとき彼女の顔に陽が射し、それに照らされた彼女はどこかのお伽噺(とぎばなし)に出てくる女神のように見えた。  それから数日後、私と彼女の関係は、とても友達同士とは呼べない、最悪なものとなっていた。  私は亜季と遊ぶことになった。その日は彼女の彼氏も一緒で、もしかしたら悪いことをしたと思った。  亜季が私のことを紹介している間、私はずっと彼のことを見ていた。とても優しそうな感じがして、こんな人といられる亜季はとても幸せな人だと思った。しかしそれは間違いだった。彼と話をしていると、私は気持ち悪くなってきた。けれどそれを気付かれないように表情は変えないでいた。そうだ、今の私がやっていることと同じようなことを彼はしているのだ。きっとそれは、私の前だけではない。今までにも何人もの友達が会いに来ているというから、彼女らはこの仮面に騙されているのだ。だから私が彼のことをどうだったかと尋ねると、とても格好良く、優しい人だったというのだ。
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