篁 祐爾 〔Ⅰ〕

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 僕は今、屋上に続く階段の最後の一段を上り終えようとしている。  その目的は僕にとってこれからの自分の人生を大きく左右するというもの。決して恋の告白なんかではない。これから起こることは、それ以上に僕の人生に関わってくる。きっと最後まで付き纏ってくるだろう。  文武両道で、目鼻立ちが整い、常に笑顔を絶やさない優しく性格の良い男なんていうのは、僕としてはいてはならないと思う。神は人に二物を与えない筈なのに、これではその言葉は間違いである。ということから(それだけではないが)、僕は神を信じていない。しかもその二物以上を与えられた男が、僕の幼馴染で、それでいて親友だというのだ。それは良いことでもあるのだが、同時に僕に対しての陰湿な虐めが繰り返されている。虐めは基本的に、女子によるものが多い。当然、僕が彼の親友であることが原因になっている。  親友の名前は菊田銀次。周りからはギンちゃんと呼ばれている。彼は現在一人暮らしをしているが、二年前までは家族四人で暮らしていた。そのときの家が、僕の家から道路を挟んだ向かい側にあり、僕らはまるで兄弟のようにして育った。
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