100人が本棚に入れています
本棚に追加
/103ページ
「奪うこと」
『奪う?』
「そう、この国から“アリス”を奪い、“アリス”から記憶を奪った」
奪う…ってのは、取るってことで…
確かに、“アリス”をさらったのだから、この世界から“アリス”を奪ったことになる
でも、“アリス”の…俺の記憶は……?
奪われたのなら、こうやって思い出せてるのはおかしい
その“ルール破り”が、それを許すとは考えにくい
「まぁ、“アリス”は特別だから完全には奪えなかったけどね」
なるほど、少しずつ洩れ出てるワケね
『…ちょっと待て。この世界から“アリス”を奪うって』
あれだけ名前に固執したやつらが、互いは役で呼び合う
…思い出せ
『時計屋……そうだ、その人はおかしい』
役で呼び合う彼らを見て、何も思わなかった
あれだけ、名前を呼べと言われたにも関わらず
それは、理由が分かってたから
『“アリス”のいない世界で、どうしてその人だけ“アリス”に対する役で呼ばれるんだ?』
理由は簡単だ
“名前”をつけた張本人が、忘れているからだ
「やっぱり、“アリス”は“アリス”だな」
『は?』
「いや…時計先生に会った時に、全て聞けばいい」
最初のコメントを投稿しよう!