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「アリス、“名前”を呼んで」
またしゃべった
しかも“アリス”と…
『俺は“アリス”じゃない』
違う
俺は違う
「それじゃ、貴方は誰なのですか?」
『俺は…有栖リデル(ありすりでる)だ』
そう…
こんなゴロの悪い名前
ハーフだからだと…思い込んでいた
「違いますよ、貴方は“アリス”だ」
『違う!』
気持ち悪い
いつもからかわれる時よりも…
くらくらする
目が回る
「この世界の毒にあてられたんですね」
黙れ
「不思議の国に戻れば、大丈夫ですよ」
うるさい
「“アリス”、僕の“名前”を呼んで?」
俺は、誰だ?
洸…俺はこの世界に存在したよな?
「“アリス”」
こんな兎…俺は知らない
「貴方は知っていますよ」
知るはずがない
「呼んで?“アリス”」
『黙れ…“ピーター”』
勝手に出てきた言葉
それが、この兎の…この男の名だと分かっていた
「大丈夫ですよ」
兎から男へと変わったピーターは俺を優しく抱き寄せた
「貴方をやっと見つけた」
俺の意識は何かに飲み込まれていった
訳の分からない気持ち悪さと懐かしさを残して
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