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「おはよ~。」
「お、今日ははやいな。」
「あんまりずっと野球してっと、丸焦げになるぜ。」
鞄を引っ掛け、教室に入った渚は、軽くハイタッチすると、躊躇無く男子の輪の中に入った。一瞬、女子の視線が集まったが、ゆっくりと散らばった。
ケラケラと笑ったり、おどけたり…。そんな渚の姿は、周りの男子と変わりない。
その渚を遠巻きから、蒼衣は眺めていた。
この所、蒼衣への風当たりは、悪くなる一方だった。野球部内では、むしろ良い。
しかしそこから一歩、外へ出た時の視線。無言と言う威圧。
それらが徐々に、蒼衣を苦しめ、蝕んでいた。
―――――死ね―――――
―――――消えろ―――――
下駄箱の中の紙切れを捨てるのが、毎日の日課になっていた。
「気にしたら、きりないよね。」
自分に言い聞かせるように、呟いた。そして、周りに誰もいない事を確認し、足早にこの場を去っていった。
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