プロローグ

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―世界は美しい。      夜明けから日没、暗闇の中でさえ、景色はただの一瞬たりとも同じ姿をとらない。  光の角度だけでも見える景色は変わる。  雨が降り、風が吹き、花が咲き、そして散る。  春には鳥がきて、巣を作る。夏の暑さは病弱なわたしには辛いけど、木陰でみる風景は格別だ。秋には臙脂色の木々が見られる。冬には雪も降る。  その光景一つひとつが、わたしにとっての宝物――世界そのものだった。    そうしてわたしは世界を愛した。愛し続けた。それら全てを描き滑らせることに心を躍らせて、    今日もまた、お気に入りのキャンバスを片手に湖へ走る。      世界はこんなにも、美しい―           -The prologue-
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