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「コイツは、後藤淳平。大阪に住んでた頃からの、幼馴染みやねん」
初めまして、と声をかけたけど、かるーく無視された。
というか、さっきからずっと睨まれてる気がする。
「なんか東京の大学に進学したいらしくてさ。親戚の家に居候してんねん」
しかも、家が結構近所でやぁ。
偶然って凄いなぁ。
…ホントに偶然か?という疑問は、敢えて飲み込んだ。
「で、この人が俺の通てる高校の先輩で、村上健志」
後藤くんは、俺を上から下まで舐め回すように見て、一言。
「…コイツが秀介の付き合うてる男か?」
「おまっ、なに言うねん!いきなり」
「そうなんやろ?」
詰め寄る後藤くんに観念したのか、秀介はコクリと頷いた。
瞬間。後藤くんは秀介に聞こえない位小さく、「チッ」と舌打ち。
(…恐い)
それから、ズンズンと俺に近寄ってきて、耳元でこう囁いた。
「秀介は俺のや!絶対にアンタから取り戻してみせるからなっ」
嗚呼、一難去ってまた一難。
さっきとは別人のような笑顔で秀介に笑いかける後藤くんを見て、大きく溜息を吐いた。
恋愛に障害は付き物。
ようは、それをどう楽しめるかだと、俺は思う。
(まっ、いっか)
俺達の日々は、まだまだ続いていく。
end
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