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「…やっと、」
不意に零れた言葉に、福徳はピクリと反応して、眼だけを動かして俺を見る。
「やっと、まともに話してくれた」
福徳とこんなに会話したの、初めてかもなぁ。
嬉しくなって笑う俺を、横目で見た福徳は黙ったまま、また窓の外に視線を戻した。
「……明日も、来るん?」
「…え?、あっ…えぇっ!な、何?!」
初めて、福徳の方から話し掛けられて、ビックリし過ぎて思わず吃る。
「…やからさ、」
クルリと振り返り、俺を見据える。
「明日も来んのかって、聞いとんねん」
彼は、ピクリとも表情を動かさないで、俺に問い掛ける。
「く、来るっ!!明日も明後日もその次も!ずっとずっと、福徳が飽きるまで此処に来るよ!」
こんな必死になって、バカみたいだ。
「…迷惑窮まりないな」
けど、福徳は笑ってくれたから。
ほんと小さくだけど、微笑んでくれたから。
俺は、バカで居ようと思う。
俺達は、会話を交して。
たった1mmづつかもしれないけど、確実に距離を縮めていた。
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