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サワサワとなびく風の音、退いては寄せる波の音。
時間帯の所為もあるのかも知れないけど、周りに人は居なくて。
割りと静かな空間に、それらの音が響く。
「…あの子さぁ、前から俺の事好きだって、言ってくれてたんだ」
少しの沈黙の後、俺はゆっくりと口を開いた。
「…あの子、って、今朝健志とキスしてた子?」
「そう」
秀介は、決して俺から眼を外そうとはせず、話を聞いてくれてる。
「でも俺、その時にはもう秀介が好きだったし。キッパリ断った」
「…そうなん?」
「うん、秀介には逃げられ撒くってたけどね」
小さく笑いかけても、秀介は真顔のまま、次の言葉を待っていた。
「だから、彼女と付き合ってる訳じゃないし、秀介以外に好きヒトは、いない」
これでもまだ、信用出来ない?
真直ぐに秀介を見て、想いを吐き出す。と
「…っわ!え、しゅう、すけ?」
突然、秀介に抱き締められた。
華奢な腕が包み込むように優しく、暖かく俺の背中に回されてる。
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