実力

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「何者……ねぇ、人間でも魔物でもないわ、ただの化け物よ。」 「あなたの生い立ちは知っている、恐らくさっきの力が原因だろう。」 シュナ・ティベロアの生い立ちは、あまりにも有名な話である。 幼い頃より、人外の力を生まれ持ったシュナは国王の命令で地下室に監禁された。 力を封じるための鉄の目隠しを着けられ、両手両足を鎖で縛られた状態で。 やがて国が滅び、忘れ去られたシュナを見つけ出したのは先々代のギルド総司令だった。 既に十七歳だったシュナだが、外の知識は何も知らないうえに人間不信……精神が崩壊していたシュナにとって他人は敵であり、忌むべき存在だった。 初めは人間を片っ端から凍らせたりするシュナに総司令も手を焼いたものの、三年かけてようやく人間らしく育てられたのだった。 精神も安定し、傷つけてしまった人々に片っ端から謝罪し、更に他人のためにギルドで死に物狂いで働いた。 結果的に功績と人格、強さ、過去の体験から他人を絶対に差別しないなどの要因から、誰からも認められる形で絶氷の皇となった。 今では国中の大人なら誰もが知っているような話であり、ギルドの歴史書にも載っている。 「やっぱり知ってるのね、少し恥ずかしいわね。」 「恥ずかしいではなくて、俺の質問に答えてください。」 苦笑しながら頬を赤くするシュナを無視して、ヴェンは力の秘密を聞く。 するとシュナの表情が一変して真面目になり、シュナの周りが突然寒くなる。 「国王が私を監禁する際に、言っていたわ……私は氷の魔神シヴァが宿っているらしいの。」
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