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そんな、父さんと母さんまで……どうして、二人が何をしたんだよ……どうしてこんな……!?
俺は何を見ているのかすら認識できなくなり、思わず叫び声をあげた。
生まれて初めての叫び、恐らくこれを絶叫というのだろう……もっとも、聞く者もいないが……
命は尊い、それ故に儚いもの。
命は一つしか存在せず、俺と絆を持つ者はいなくなってしまった。
俺が絶叫を終えて暫く炭を見ていると、炭は崩れてきた天井に潰されて粉々に砕け散った。
これで俺は完全に一人だ……もう俺の存在価値も消えた、何もかも終わりだ。
いや、まだだ……
まだ奴を殺していない。
ジンを、父さんを、母さんを、そして町を滅ぼしたあの女……奴だけは許せない、奴を殺すまで俺は追い続ける。
俺は心にそう誓うと、とりあえず家の外に出た。
雨はまだ降り続き、空は暗雲に包まれている。
どうせ一度死んだ命だ、命は惜しくない……しかし問題は力だ、俺にはまだ奴を殺すだけの力量が無い。
俺が己の無力さに歯を食いしばりながら歩くと、町の中心で見たのは降り積もった奴の羽だった。
羽は淡い光を纏い、雨を弾いているようだった。
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