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「……綺麗な羽だな。」
思わず口に出してしまった。
奴に対して憎悪を抱いている俺でも、見とれてしまうほどに神々しく綺麗だった。
そして俺は輝く羽を見ているうちに、妙な違和感を覚えた。
触れてはいけない気がするが、触れれば何かが変わる気がする。
輝く羽からは肌を通して力が伝わる、触れれば力を得られるかもしれない。
奴を殺せる、復讐の力を……
しかし心のどこかでやはり触れることを恐れ、俺は葛藤していた。
だがその葛藤も、すぐに意味を無くす……
どうせ復讐など呪われた行為に過ぎない……忌々しい奴の力を使おうが関係ない、要は奴を殺せればいい……
奴を苦しめ、悶えさせ、屈服させ、そして殺してやる。
手段など選ぶ必要も無い戦い、それが復讐だ。
俺はもはや迷い無く、奴が残した黒く輝く羽に触れた。
すると羽が消えると同時に、俺の背から奴と同じ漆黒の翼が生える。
そして俺が何より求めたもの……力と魔力を、自分から感じる。
「俺は力を手に入れた……
ジン、俺は奴を殺す……これでようやく殺せる。」
俺はジンの形見となった銀色の腕輪を左腕に着けると、思わず薄ら笑いを浮かべた。
この時、後に
“黒き翼を持つ者”
と呼ばれる少年……人に在らざる者が誕生した。
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