力を求める理由

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カルバム…… そこは緑に包まれ、常に賑やかな町だった。 人々はそこを楽園と呼び、穏やかで平和な毎日が続いた。 カルバムに住む七歳の少年ヴェン・アルレウスは、友人のジン・ヴォルザスに誘われて毎日のように町外れの森に行く。 しかし今日だけはジンが病に侵されたため、薬草を採りに一人で森に行くことになった。 「大人しく寝てろよ、俺が薬を採ってきてやるから。」 深い碧の瞳に、陽光を受けて純白に煌めく白銀髪を持つ少年ヴェンは、ベッドで寝ている黒目に黒髪の少年ジンの頭に氷を乗せる。 「……悪いな、流石の俺も今日は無理だ。」 いつもはお調子者で活気あるジンだが、今日は鼻水を垂らしながら大人しく寝ていた。 ヴェンにはそんなジンが、いつも以上に面白く思えた。 「じゃあおじさん、行ってきます。」 「いつも悪いね、ジンは君に迷惑をかけてばかりだろう。」 「いえ、こんなジンも面白いですよ。」 「てめ……どういう意味だ……」 ヴェンはジンの父親に挨拶を済ませると、鼻水を垂らしながら怒るジンを笑いながらジンの家を出た。 「さて……行くか。」 ヴェンは家の壁から手に取った護身用のナイフを腰の鞘に納めると、ジンの家に手を振りながら町を出た。
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