序章

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少女は探す 無くしたものを探す 「ない…わたしの」 少女は探す 無くしたものを取り返す為に 「わたしの…“赤い靴”」 裸足で少女は歩く 他の靴は履きたくないから 少女は赤い靴がお気に入り… 誕生日で貰った大切なもの 少女は一目でその靴に魅入られた どこにでもある靴 しかし少女には特別な靴 「わたしのだいじな赤い靴をうばったのは誰?」 理由もなく少女は呟きながら外を歩く 人は誰一人いない 夕日が沈む頃でも明るいうちは人が少し でもいるもの しかし少女の前には人はいなかった まるでそこだけが別の空間で出来ているようだった 「あ……」 少女は声を漏らす 目の先に人が一人見えたのだ だが少女が驚いたのはそこじゃない 女性が履いている赤い靴に目がいったのだ 「赤い靴…みつけた…“わたし”の……返して貰わないと」 少女は駆ける 傷だらけの素足に痛みを感じないのか、顔を歪める事なく女性に近付く 「きれいな靴ね」 そう言って少女は微笑んだ 女性も笑みを返す
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