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わたくしは小さな機械です。
わたくしは大きな大きな機械の、ごく小さな部品として動く機械です。
昼夜を問わず動く大きな大きな機械の部品として、昼夜を問わず反復運動を行います。
わたくしが壊れても代替部品は沢山あるので、誰も困ったり悲しんだりせず、大きな大きな機械は動き続けます。
先程隣の部品が交換されました。新しい部品はぴかぴかで、滑りも良く音もなく素晴らしい反復運動をしています。
見惚れた一瞬、わたくしの反復運動は軋む音を立ててリズムを失いました。
かつて、未だ小さな機械になるより昔、わたくしは皆で歌ったり踊ったりして笑顔の絶えない花園に居りました。
上手く歌えなかったわたくしは、そこに在る資格が無いと云われ、仕方なく小さな機械になってこちらに参りました。
歌えもせず、反復運動もできず、価値が無いわたくしの居場所は最早この世の何処にも在りません。
もうすぐ交換されてしまいます。
もういいのです。ただ気掛かりな事は、棄てられる先で、わたくしの歌を誰かが嘲笑いながらも聴いてくれるのかどうか。
称賛などいりません。
ただ誰かがいてくれたら。
ただ笑ってくれたら。
一人は
孤独はいやだよう。
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