ピストン

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わたくしは棄てられました。 誰も居ないと、わたくしは在るのか無いのかも判りません。 嫌だよう 怖いよう 誰もいない此処で、何でもないわたくしのままで居るのは耐え切れません。 わたくしは棄てられた場所で蹲り泣き続けるのを止め、立ち上がって歩き出しながら声を上げました。 おうい、おうい。 先程まで独りぼっちだと思っていた場所には、たくさんの棄てられ仲間が其処此処に蹲って泣いていました。 皆が一斉にわたくしを見て、歩み寄ってわたくしに触れてくれました。 わたくしは、やっとわたくしに成れました。
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