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ものに名を付けるは、呪の根源と申します。
不確定で流動的な森羅万象を、名によって固着させるのでございます。
芽吹き花開き散り若葉茂り枯れる、千変万化する‘それ’に名をお付けになれば、どの瞬間も‘桜’の名の内に絡め取られましょう。
有象無象に説明と理由を探すのもまた同じこと。
形に収めれば即ち恐るるに足らず。幽霊の正体見たり枯れ尾花とは良く申したもので。
己が心の内を覗き解明せんとする行為を学問にまで高めた研鑽も、元を辿れば恐れ故でございましょう。
己の内への恐れ。定まらぬものを内包することへの恐れ。殻には親からいただいた名があるにも関わらず、誰も知らぬ内なる秘めごとに自ら恐れ慄くのが人。
か弱い、未熟だ、秀でている、自分だけは違う、つまらない、実は野心家だ、嫉妬深い、諦めた、幸せだ、賢い、醜い、素晴らしい、みすぼらしい……
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