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太郎は一生懸命走るが残念ながら亀!かなり遅い!走りながら太郎は考える。
ハアハア…!畜生!俺だけ捕まるのか!?谷口を助けたのはアリなのか!?何故なんだ!!
そしてかなり進んでいた谷口が太郎の元へ戻って来た!
「オイ!おめえは俺の命の恩人だ!足、遅いんだろ?つかまれ!」
そう言って谷口は右手を差し延べた。視界の先には蟹江が顔面から大量の血を流しながら追いかけてくる!
「谷口…。」
太郎の目からは一筋の涙が頬をつたう。
谷口は太郎をポケットに入れ、ひたすら走った。
後ろにいた蟹江はいつの間にか消えていた。そして気付くと太郎と谷口が初めて会った砂浜に来ていた。
「ハアハア…疲れたな。少し休もうか。」
谷口はもう汗だくだ。
「谷口…サンキューな。」太郎がうつむいたまま言った。
「いや、俺が悪いんだ。謝るなよ。ココ…覚えているか?」
ピクッ!
一瞬、太郎の目つきが変わった。
「ああ…。俺がお前の裏切りにより、死にかけた場所だな。」太郎はほっぺを膨らまし、軽く睨んだ。
「スマン、スマン!いろいろとしょうがなかったんだよ!マジ!今日助けてくれて本当に助かったよ!本っ当に目が覚めた!お前は一生の俺のマブダチだぜ!」ニコニコしながら谷口は言った。
「コノッ!調子のいい奴め!しかし、何故だか憎めないんだよ…。お前は得な性格してるよな~!」マブダチと言われたのが嬉しかったのか、太郎は涙ぐんでいる。
「んな事ねーよ!お前は亀だけどマジでいいやつだ!」
気持ち悪いぐらいにお互いを誉めていると、太郎がいきなり立ち上がり、浜辺のほうへと歩き出した。
「オイ!どうしたんだよ!」谷口も浜辺まで走って来た。
太郎は黙って海を見ている。水平線にはちょうど夕日が沈んでいるところだ。オレンジの激しい光が太郎を照らす。目を細めて太郎が語りだした。
「なあ、谷口…。お前の常識では考えられない話かもしれないが聞いてくれ。竜宮城って知っているか?」
「竜宮城って浦島太郎のアレ?」
「ああ…。そうだ。お前、行きたいか?俺は…実は竜宮城案内亀なんだ。」
「な、何ぃ!?じゃあ俺は竜宮城に行けるのか!?」
「そう!人間で太郎という名前で心の清い奴だけが招待できるんだ。俺の審査の結果、お前にはその資格がある。」太郎は谷口に向かって微笑んだ。
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